相談者3

父が亡くなったので相続手続きをしたいのですが、母が認知症で意思疎通ができません。どうすればよいのでしょうか?

司法書士

お父様は遺言を残されましたか?

相談者3

いいえ、突然のことだったので遺言書はないようです。

司法書士

遺言書がなければ遺産分割協議が必要ですが、認知症のお母様は遺産分割協議を行うことができませんので、成年後見制度を利用することになります

こんにちは、相続に強い柏の司法書士・竹内宏明です。

 

高齢化社会が進むにつれ、認知症患者の数も増え続けていると言われます。

内閣府のホームページによりますと、65歳以上の認知症高齢者の数と割合は、

 

2012年の時点で462万人(65歳以上の7人に1人)

 

だったそうですが、これが

 

2025年の時点では600万人以上(65歳以上の5人に1人)

 

にまで増加すると推計されています。

 

認知症によって物事を判断する力が低下してしまった方は、遺産分割協議に自分だけで参加することができません。

このようなときは、認知症の人に代わって遺産分割協議に参加する人を家庭裁判所に選んでもらうことになります。これを成年後見人の選任といいます。

(※認知症が軽度の場合は、保佐人・補助人といった権限の異なる人が選ばれることもあります。これは医師の診断によります。)

成年後見申立の手続きと注意点

成年後見の申立は、本人(認知症の人)の住民票上の住所を管轄する家庭裁判所に対して行います。

申立てをすることができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族などに限られます。

誰が選ばれるの?

申立ての際には、

「この人を成年後見人に選んでください」

といった形で候補者を挙げることができますが、その候補者が選ばれるとは限りません。

例えばいままで本人(認知症の人)の財産を事実上管理していた本人の息子だったとして、成年後見人候補者としてもその息子を挙げることはできますが、必ずしも候補者が選ばれるとは限らないのです。

司法書士・弁護士といった専門職が選ばれる可能性も十分にあります。

また、候補者がそのまま選ばれたとしても、後見人を監督する「成年後見監督人」として司法書士・弁護士などの専門職が選任されることがあります。

専門職が選任された場合、専門職に対する報酬が別途発生することにも注意が必要です。

いつまで続くの?

遺産分割協議のために成年後見人を選んでもらったのだとしても、遺産分割協議が終われば成年後見が終わるわけではありません。

成年後見は、一度開始したら、本人の物事を判断する能力が不十分な状態が続く限りは終了しません。

ほとんどの場合、本人(認知症の人)が死亡するまで成年後見は続くことになります。

遺産分割の内容はどうなる?

成年後見人は、本人(認知症の人)の利益のために選任されていますので、遺産分割協議は原則、本人の法定相続分が確保された内容で行われることになります。

従って、柔軟な遺産分割協議が難しくなってしまうことがあります。

成年後見人が親族であるときの注意点(特別代理人)

父が亡くなり、相続人として母・長男の2名がいる場合を考えます。

すでに母が認知症を発症し、遺産分割協議を行うことができない状態であれば、母に成年後見人をつけなければなりません。

ところが、この成年後見人に長男が選任された場合は、長男は母の成年後見人として遺産分割協議を行うことができません。

なぜなら、長男は自分自身が遺産分割協議の当事者でもあるからです。

長男に母の成年後見人としての立場での遺産分割協議への参加を認めてしまうと、長男が自分の利益を優先し、母(成年被後見人)に不利な遺産分割にしてしまうことが懸念されます。

このときは、成年後見人のかわりに遺産分割協議を行う「特別代理人」を家庭裁判所に選任してもらうことになります。

(※なお、成年後見監督人がついている場合は、特別代理人の選任は不要です)