こんにちは、相続に強い柏の司法書士です。

 

件数として多くはありませんが、死因贈与契約についてお問い合わせをいただくことがあります。

死後の財産の行き先を定めておくとなると、一般的には遺言の利用を検討することが多いですよね。死因贈与契約は、遺言と類似している制度ですが、遺言とは異なる特徴があります。死因贈与と遺言、どちらを選択すべきかはそれぞれのメリット・デメリットを考慮し、状況に応じて決めていけばよろしいかと思います。

今回の記事では、「死因贈与契約とは何か」について遺言と比較しながらご説明していきたいと思います。

死因贈与契約と遺言の違い

死因贈与は、

贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与(民法第554条)

と法律で定められています。

一方、遺言は

遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる(民法第985条)

と法律で定められています。

いずれも死亡によって効力を生ずるという点が共通しています。その違いはズバリ、

 

死因贈与は「契約」であるのに対し、遺言は「単独行為」であるということ

 

死因贈与はあげたい人(贈与者)ともらいたい人(受贈者)の意思が合致して成立する「契約」であるのに対して、遺言はあくまでも遺言者がひとりで(独断で)行う単独行為なのです。

死因贈与契約と遺言の相違点は、この法的性質の違いを念頭に置いて考えると理解しやすいかと思います。具体的には次の5つのポイントにおいて違いが表れてきます。

 

ポイント1 もらう側の意思確認

 

死因贈与契約であり、相手方の「もらう」という意思を事前に確認することができる遺言は生前には相手に内容を知らされないケースも多く、もらう側の意思が定かでない(拒絶される可能性もある)

 

ポイント2 負担を付けることの可否

 

死因贈与は贈与の見返りとして相手方に生前の負担を定めることができる(同居すること、身の回りの世話をすることなど)。遺言生前には相手に内容を知らされないケースも多く、生前の負担を定めるには適さない

 

ポイント3 撤回の可否

 

死因贈与契約である以上、いったん締結すると容易に撤回することができないことがある(特に相手方に負担を定めた場合)遺言遺言者の意思で何度でも書き換えることができる

 

ポイント4 方式の有無

 

死因贈与には方式の定めがないため、方式不備による無効の恐れがない遺言は方式が法律で定められており、方式に違背すると無効になる恐れがある。

 

ポイント5 生前に登記することの可否

 

死因贈与はもらう人(受贈者)の期待権があげる人(贈与者)の生前から発生しており、これを保護するために生前の不動産仮登記ができる遺言は、遺言者が死亡するまでは何ら生前に利益を保全することはできない

 

 

生前からあげる人ともらう人の意思疎通が実現し、生前から負担をつけることができる。また不動産登記においては仮登記という形を残せるため、その後の不動産処分を制限できるというところに死因贈与のメリットがあらわれています。

生前に特定の財産を特定の人に確実に引き継がせる道筋をつけておきたいという場合には、死因贈与契約が有効といえるでしょう。

死因贈与契約は公正証書がおすすめ

死因贈与契約には方式の定めがなく、口頭でも可能です。しかし実際のところは公正証書で作成することをおすすめいたします

死因贈与契約を利用するケースには、

 

・相続人間の仲が悪いため、特定の財産について生前に道筋をはっきりつけておきたい

・事実上の妻(内縁の妻)に対し不動産を取得させる道筋をはっきりつけておきたい

 

など、死後に争いが起きかねないことを想定してなされるものも多くあります。このとき、贈与者の死後に発生するという死因贈与契約の性質から、贈与者の真意・意思能力といった部分が問題になるケースが多いのです。つまり、いざ贈与者が死亡したという段階になって、

 

「そもそも贈与者に意思能力はあったのか?」

「贈与者が自分で締結した契約なのか?」

 

といったところにケチをつけられると、当の本人である贈与者が死亡しているため、証明が困難なのです。

この点、死因贈与契約を公正証書にしておけば、作成時点での本人確認・意思確認が公証人によってなされますのでトラブル防止に有効です。

死因贈与契約の際の注意点

死因贈与執行者

死因贈与契約においては、死因贈与執行者を指定しておきましょう

死因贈与執行者が指定されていませんと、贈与者の死後に契約内容を実現するためには贈与者の相続人全員が契約の履行を行うか、もしくは、家庭裁判所に対し死因贈与執行者の選任を申し立てしなければなりません。

この点最初から死因贈与契約において、もらう人(受贈者)を死因贈与執行者に指定しておけば、贈与者の死亡後に煩わしい手続きを経ることなくもらう人(受贈者)のみで契約を実現することができるようになります。

税金の取り扱い

不動産の所有者名義を変更する場合、登録免許税という税金が必ずかかります。この登録免許税に関しては、相続人が不動産をもらい受けるという場合、死因贈与契約と遺言を比較すると死因贈与契約の方が割高になります。

登録免許税は以下のように計算されます。

〈死因贈与〉不動産評価額 × 1000分の20

〈遺  言〉不動産評価額 × 1000分の4

 

さらに、相続人が遺言により不動産を取得した場合は不動産取得税がかかりませんが、相続人が死因贈与によって不動産を取得した場合には不動産取得税がかかる点にも注意が必要です。

 

また通常の生前贈与との比較になりますが、生前贈与には贈与税が課税されるのに対して、死因贈与は相続税として課税される扱いになっています。この点については、生前贈与に比べ死因贈与の方が税制面でメリットが出るケースが多いようです。

最後に

遺言に比べて利用される頻度の低い死因贈与ですが、事情によっては有効活用できる手段となります。

特に、未婚の子どもや、事実上の妻(内縁の妻)などに生前のうちから不動産取得の道筋をつけておきたいといったケースでは、死因贈与契約を締結しておくことで気持ちがすっきりとし、はれやかな表情を浮かべるお客様が多くいらっしゃるように思います。

今回の記事がお読みいただいたあなたにとって参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。