こんにちは、相続に強い柏の司法書士です。

子どものいないご夫婦の相続について相談を受けることがあります。特に最近は、いわゆるDINKs(=Double Income No Kids)つまり「共働きであえて子どもをつくらない」というライフスタイルが広まり、また晩婚化の傾向も強まりつつあります。今後も子どものいないご夫婦の相続についての相談件数は増えていくだろうと考えています。

ライフスタイル・価値観が多様化していく中、私たち司法書士も個々のケースに応じて最適の生前対策・相続手続きをご提案できるよう日々の自己研鑽が求められます。

さて今回の記事では、子どものいないご夫婦の死後、遺言書が残っていなかったために相続人間で大変もめたケースをご紹介いたします。

子どもがいない人の遺産は、誰が相続する?

ある方が亡くなったとき、その亡くなった方(=被相続人)の遺産を、誰が(=相続順位)、いかなる割合(=相続分)で相続するのかは、民法に定められています。

被相続人に子どもがいない場合は次のようになります。

①配偶者 

まず、配偶者は健在であれば常に相続人となります。

そしてその相続分は以下の場合にわけて異なってきます。

②被相続人の父母 

被相続人の父母が健在であれば、父母が「①配偶者」とともに法定相続人となります。その相続分は、「配偶者が3分の2・父母が3分の1」となります。

③被相続人のきょうだい

被相続人の父母がすでに死亡している場合は、被相続人のきょうだいが「①配偶者」とともに相続人となります。その相続分は、「配偶者が4分の3・きょうだいが4分の1」となります。

実際のところ、被相続人が死亡した時点では、すでに被相続人の父母は死亡しているケースがほとんどです。

つまり多くの場合、子どもがいない夫婦の相続においては、相続人として「①配偶者」と「③被相続人のきょうだい」が登場することになります。

実例:子どものいない夫婦が、遺言書を残さずに相次ぎお亡くなりになった際のトラブル

ここからは、私が実際に経験した事例をモデルにしてお話しいたします。

子どものいないご夫婦(夫A・妻B)の相続です。

夫Aは平成20年に死亡、妻Bは平成21年に死亡しました。夫A・妻Bの両親はすでに死亡しておりましたので、登場人物は以下のようになります。

登場人物

〈夫Aの相続人〉

、および、夫Aのきょうだい の3名

※夫Aの死亡時点では妻Bは生存していましたので、妻Bは相続人になります。

〈妻Bの相続人〉

妻BのきょうだいEF の2名

※妻Bの死亡時点では夫Aは先に死亡しておりますので、相続人は妻のきょうだいのみとなります。

遺産有り。遺言書無し。

夫婦は生前、共働きで各々が着実に貯蓄をしており、A・Bそれぞれが5千万円ずつの現金を遺産として残しておりました。

そして、夫婦はともに遺言書を残さずに亡くなりました。

遺言書が残されていないので、相続人全員が各々の相続分に基づいて遺産分割協議に参加する必要があります。

遺産分割協議。各相続人はどのくらいの割合(相続分)を主張できる?

ここで肝になるのが、夫婦の死亡した順番です。今回、夫Aが先に死亡しています。その結果、

 

〈夫Aの遺産5千万円については〉

・妻Bが4分の3(=3750万円)

・夫AのきょうだいCDが4分の1(=2人あわせて1250万円)

 

を主張できます。

そして、妻Bは翌年すぐに亡くなりましたので、実際は夫Aの遺産分割協議において、妻Bのかわりに妻Bの相続人EFが参加することになります。

つまり、実質は以下の通りです。

 

〈夫Aの遺産5千万円については〉

・妻BのきょうだいEFが4分の3(=2人あわせて3750万円)

・夫AのきょうだいCDが4分の1(=2人あわせて1250万円)

 

一方、後に亡くなった妻Bの遺産はどうなるでしょうか。こちらは単純に以下の通りです。

 

〈妻Bの遺産5千万円については〉

・妻BのきょうだいEFが全額取得する(2人あわせて5000万円)

 

上記は、民法の規定通りの相続分です。

しかし、夫AのきょうだいCDは当初納得しませんでした。気持ちももっともです。

何しろ、AB夫婦で合計1億円の現金が残っていました。そのABが、1年と経たない短期間で相次いで亡くなったわけです。CDの感覚としては、夫婦で築き上げた貯蓄のうち半分程度(5千万円位)は、当然にCD側が取得するべきであろうという話なのです。

それが、わずか1250万円が手元に残るのみで、残り8750万円が妻Bの実家にもっていかれるとは・・・

最終的には、CD側にも民法上の相続分をご理解いただき、またEF側が多少の譲歩をみせたこともあり、なんとか遺産分割協議がまとまりました。

しかしそもそも夫A側のきょうだいと、妻B側のきょうだいとでは、生前はほとんど何の面識もなかったということもあり、相談開始から解決に至るまで相当の年月を要した案件でした。

トラブル予防に、遺言書は有効な手段です

上記のケースは、生前に相続対策を立ててさえおけば、トラブルを未然に防ぐことができたと言えます。その相続対策の内容はケースによっていくつか考えられますが、有効な手段のひとつとしてやはり遺言書を残しておくことがまず挙げられます。

遺言書は、残される相続人のために作るもの。

ご自分の死後、残された相続人に予期せぬ負担・混乱を招かぬよう、ぜひ遺言書の作成をご検討ください。司法書士は、遺言書作成のサポートができる身近な法律の専門家です。