こんにちは、相続に強い柏の司法書士です。

 

「遺産分割をしたいが、相続人の中に行方不明者がいる」

というご相談は、意外と珍しくありません。

 

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。相続人中に行方不明者がいる場合も、その者を除外するわけにはいきません。

 

このような場合、「不在者財産管理人の選任」または「失踪宣告」のいずれかの方法で解決を図ることになります。

 

以下にそれぞれの手続きのついてご説明いたします。

不在者財産管理人の選任

不在者財産管理人とは

住所(生活の本拠)や、居所(現実に生活の拠点となる場所)を去った者を民法では不在者と呼びます。

つまり、行方の分からなくなった人のことです。

家出や離婚にともなう別離など、事情は様々に考えられます。

不在者の財産を管理する者がいないときに、家庭裁判所は一定の者の申し立てを受けて、財産管理管理人選任等の処分を行うことができます。

このように選任された財産の管理人を不在者財産管理人といいます。

不在者財産管理人の権限

不在者財産管理人は、不在者の財産に関して、原則として「保存などの管理行為をなす権限のみ」を有するということになっています(民法第28条、民法第103条)。

つまり、例えば不在者名義の不動産を勝手に売却する権限(処分行為)はありません。

このような処分行為を行うためには、権限外行為として家庭裁判所の許可を受けなければなりません。

本題に戻り、「不在者のために遺産分割協議を行う」という場合、これは処分行為にあたり家庭裁判所の許可が必要となります。

不在者財産管理人は不在者の利益を保護する立場にあるため、遺産分割協議の内容は原則として不在者の法定相続分を確保した内容である必要があります(そうでなければ家庭裁判所から権限外行為に対する許可が下りません)。

しかし、いつ現れるかもわからない不在者に法定相続分の遺産を取得させてしまうと、その後もずっと不在者の財産管理が続いてしまうという問題が生じます。

このような事態を避けるために、「不在者は財産を取得しない形で遺産を分割しておき、そのかわり、もし生きて現れたときには法定相続分相当の金銭の支払いを他の相続人から受けることができる」という内容の遺産分割協議を行うことがあります。

このような遺産分割協議を「帰来時弁済型(きらいじべんさいがた)」と呼びます。

帰来時弁済型の遺産分割は実務上はよく用いられますが、相続財産があまりに多額である場合など、家庭裁判所の許可を得るのが困難な場合もあります。

失踪宣告

失踪宣告とは

行方不明の相続人について、生死が7年以上明らかでない場合は、失踪宣告という手段を検討することもできます。

人の生死が明らかでない状態が長年にわたり続くと、財産の管理や身分関係などが不安定になってしまいます。

このような不都合を解消するための制度が失踪宣告です。

利害関係のある人から家庭裁判所に対して申し立てを行い、失踪宣告の審判を受けます。

失踪宣告の種類

 

失踪宣告には以下の2種類があります。この記事では「①普通失踪」に基づいてご説明しています。

 

①普通失踪

 不在者の生死が7年間明らかでないとき。

 この場合、家庭裁判所から失踪宣告を受けた者は、7年間の期間が満了した時に(つまり行方不明になって7年が経過した時点で)死亡したものとみなす。

 

②危難失踪

 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中にあった者、その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が明らかでないとき。

 この場合、家庭裁判所から失踪宣告を受けた者は、その危難が去った時に、死亡したものとみなす。

 

失踪宣告がされると

行方不明の相続人について失踪宣告がされると、7年間の失踪期間が満了した時にその相続人は死亡したものとみなされます。

もし失踪宣告がされた相続人を代襲相続する者(子など)がいれば、代襲相続人を加えて遺産分割協議を行うことになります。

代襲相続する者がいなければ、失踪宣告がされた相続人以外の相続人で遺産分割協議を行えばよいということになります。

まとめ

失踪宣告は、申し立てから審判がおりるまで半年程度の時間を要します。

相続の手続きを急ぐ場合は、行方不明の相続人についていったん不在者財産管理人を選任しておき、その後失踪宣告の手続きに入るという方法もあります。

また、不在者財産管理人にせよ失踪宣告にせよ、手続きに時間と費用がかかります。もし相続人に行方不明者がいることが最初からわかっているのであれば、遺産分割協議をしなくてもいいように、生前に遺言書を作成しておくということが大事だと言えるでしょう。