相談者2

私たち夫婦には子どもがいません。私が先に亡くなると思いますが、財産は十分に残せるから心配いらない、と妻には言ってあります。

司法書士

太郎さん、他に身内の方はいますか?

相談者2

兄が2人おりましたが、すでに亡くなりました。甥姪はおりますが何十年も付き合いがありません。両親も亡くなりましたし、身内といえるのは妻だけですよ。

司法書士

・・・太郎さん、遺言書は作ってありますか?

相談者2

いいえ。私が死んだら妻が全部相続するわけですよね?遺言書なんていらないでしょう。

司法書士

太郎さんのケースでは、相続人は妻だけではありません。甥姪にも相続権があります。遺言書を作っておかないと、面倒なことになりかねませんよ。

子どもがいない夫婦の場合、夫の遺産は妻が全て相続するものと思っている方が多くいらっしゃいます。実はそうとは限りません。

民法では、誰が相続人になるのか(法定相続人)について次のように定めています。

法定相続人とは?

 

被相続人の配偶者と、下記の順位に従った被相続人の血族のことを言います。

〈常に相続人〉 

配偶者

〈血族相続人〉

第1順位 子(子が先に死亡しているときは孫) 

第2順位 父母

第3順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に死亡しているときは甥姪)

 

ご覧のように、太郎さんのケースでは、相続人として配偶者のほかに甥姪(第3順位の血族相続人)が登場してきます。

太郎さんが遺言書を作らなかった場合、太郎さんの遺産は相続人全員での遺産分割協議によって分けることになります。つまり残された妻は、太郎さんの甥姪から実印と印鑑証明をもらわなければ、自宅の名義変更も銀行の預金解約もできません。

 

相談者2

そんな・・・甥姪とは私だって何十年も付き合いがないのに。妻には無理ですよ。それに姪は国際結婚してアメリカに移住したと聞いているし・・・

司法書士

遺言書を作りましょう。きちんとした遺言書があれば、甥姪の関与なく奥様に遺産を相続させることができますよ。

 

「全財産を妻に相続させる」旨の遺言書を残しておけば、遺産分割協議は不要となり甥姪の関与なく妻が単独で相続手続きを行うことができます。

特に、甥姪に関しては遺留分もありませんので、「全財産を妻に相続させる」遺言書であっても、その内容に異議を唱えられる心配はありません。

子どものいない夫婦については、それぞれがきちんと遺言書を残しておくということがとても重要になってきます。

 

相談者2

さっそく遺言書の作成にとりかりたいと思います。遺言書を作るにあたって気を付けることはありますか?

司法書士

万が一、先に奥様が亡くなることも想定して、奥様が先に死亡している場合はどうするかも書き残しておいたほうがよいでしょう。

 

妻に全財産を相続させるという遺言書を作っても、妻が先に死亡してしまったら遺言書は無効になります。その時点で遺言書を作り直すことも可能ですが、太郎さんも高齢になり遺言書を作り直すのが難しくなっているかもしれません。

できれば、「万一、妻が遺言者より先に死亡した場合は」財産をどうするのかを遺言書に書き残しておくのが望ましいでしょう(これを予備的遺言といいます)。予備的遺言では甥姪に相続させるということもできますし、お世話になった知人や、団体への寄附なども可能です。

 

相談者2

なるほど。妻が先に亡くなる可能性も考えなくてはなりませんね・・・ということは、妻にも遺言書を作ってもらった方がいいわけですか?

司法書士

奥様にも遺言書がありませんと、万が一奥様が先に亡くなったとき、太郎さんが奥様の兄弟や甥姪のハンコを集めなければなりません。

相談者2

それは大変だ!ぜひ妻にも一緒に遺言書を作ってもらうことにします。

司法書士

それがいいですね。おっと太郎さん、ご夫婦で遺言書を作るのは結構なことですが、夫婦連名の遺言書は無効ですから注意してくださいね。あくまでも別々の遺言書として作る必要があります。

連理の枝もポキリ!?連名の遺言は無効です

 

相談者2

スッキリしました。遺言書の作り方については引き続きアドバイスをもらえればと思います。

司法書士

もちろんです。しっかりとした遺言書を作り、将来の不安が解消されれば、現在の生活をより生き生きと過ごせるようになるでしょう。