「遺言書は不要」にありがちな3つの思い込み

 

こんにちは、相続に強い柏の司法書士です。

 

「自分には遺言書なんて必要ないよ」

 

こんな風にお考えの方、ちょっとお待ちください!。

それは思い込みかもしれませんよ。

後々になって、面倒なトラブルや取り返しのつかない後悔を招かぬよう、ぜひ今回の記事をご一読ください。

①「うちは家族仲が良いから大丈夫」

いまは家族関係が良くても、親が亡くなり「重し」がとれたときに子どもたちの関係性に変化が現れないと言い切れますか?

子どもたちそれぞれにかけた教育費、結婚の際の資金援助、マイホーム購入資金の援助など、全く平等とは言えませんよね?

仮にそういった経済的不平等がなくても、子どもたちの間に抑圧された感情のわだかまりがないとは言い切れません。

例えば介護の負担が子どもたちのうち誰かにだけかかっているということはありませんでしょうか?

相続をきっかけにこういった不満が表面化することだってあるのです。

②「うちは財産が少ないからもめないよ」

遺産は少ないほどもめる、とすら言われています。

相続人同士の遺産分割協議がまとまらずに家庭裁判所へ申し立てられた遺産分割調停の価額別内訳をご覧ください。

 

遺産の価額     ~1000万円以下 約3割

遺産の価額1000万円~5000万円以下 約4割

 

といったところで推移しており、もめている遺産分割の約7割が遺産5000万円以下であることがわかります(裁判所HP司法統計年報より)。

 

結局のところ、「争族」の原因は、遺産の価額の大小ではないのです。

③「まだ元気だから早いよ」

「自分はまだ大丈夫」

と言っているうちに、加齢とともに気力・体力の衰えを生じ、結局遺言書を書けないままお亡くなりになる。このようなケースも珍しくありません。

遺言書の作成には、財産の整理や相続人調査、場合によっては相続税のシミュレーションなど気力・体力を必要とする作業も含まれます。

また、死の間際になって書いた遺言書はその有効性自体が争いとなっていますケースもあります。

「遺言書は元気なうちに」は鉄則です。

遺言書がないときに起こりがちな5つのトラブル

ある方が亡くなったとき、遺言書が残されていなければ、基本的に相続人全員での遺産分割協議をしなければなりません。

「遺産分割協議をする」とは、具体的には

 

・相続人全員で遺産の分け方について合意し、

・遺産分割協議書を作成のうえ、

・実印を押印し印鑑証明書をつける

 

ということです。

これがスムーズにまとまれば問題ありません。しかし遺産分割には、例えば次のようなトラブルが生じるリスクがあります。

① 生前の貢献に対する不公平感

父親が亡くなり、相続人が長男A・長女B・二女Cだったとします。

長男Aは仕事の関係で海外に在住、親と顔をあわせるのは何年かに一度といった疎遠な状態。

長女Bも遠方に嫁ぎ、親の顔をみることができるのはお盆と正月程度。

二女Cだけが、亡くなった父親の病院付き添い・日常生活援助などを負担していました。

日頃面倒をみてくれる二女Cに対し、生前お父様は財産の大半を分け与えるとの想いを二女に伝えていました。しかし、その想いを遺言に残すことなく亡くなってしまった。

遺言書が残されていない以上、相続人A・B・C全員での遺産分割協議が必要になりますが、このとき長男A・長女Bにはそれぞれ「3分の1」という法律で定められた割合(法定相続分)が確保されています。

二女Cの貢献(寄与分)を認め、長男A・長女Bが法定相続分から譲歩すれば話はまとまります。しかし長男A・長女Bがあくまでみずからの法定相続分を主張した場合、話し合いがこじれ、裁判所の関与が必要になるかもしれません。そうなれば、遺産分割は解決しても、感情のしこりが消えることはないでしょう。

遺言書を作ればこのような事態を回避することができます。

② 相続人ではない関係者の口出し

①のケースで、二女Cに夫がいた場合はどうでしょうか。

二女Cは長男A・長女Bの法定相続分を認めるつもりがあったとしても、二女Cの夫がそれを受け入れないかもしれません

二女Cの夫は相続人ではありませんから法的な発言権はないのですが、二女Cに多大な影響力をもち、また二女Cと利害が一致する立場にあります。

また逆に、長男A・長女Bは二女Cの貢献を認め、財産の大半を譲ってもよいという考えを持っていたとしても、長男A・長女Bの配偶者が別の主張をするという事態も考えられます。

このように遺産分割協議になりますと、相続人ではない関係者の意向も事実上無視できなくなるケースがあります。これは話し合いがますますこじれる要因となります。

③ 物理的に相続人全員のハンコがそろわない

遺産分割協議をするにあたって、相続人全員の実印をそろえるということ自体が難しいケースもあります。例えば以下のようなケースです。

  • 相続人の中に、国際結婚で海外在住の方がいる
  • 長年にわたり音信不通の相続人がいる
  • 会ったこともない、連絡もとったことのない相続人がいる
  • 認知症を発症している相続人がいる
  • 相続人の中に未成年者がいる

いずれのケースも、司法書士等の専門家にご相談いただければ対応はもちろん可能ですが、時間・費用がかかってしまいます。また、いくら専門家に任せるとはいっても、解決までに長い時間を要することは相続人にとって精神的な負担が大きいといえます。

④ 財産の一部が手続きから漏れてしまう恐れ

遺言書を残せば、財産目録等にすることでご自分の財産を明確にしておくことができます

財産が明確化されていない場合、相続人はゼロから財産の調査をしなければなりません。

自宅の土地建物や、メインの取引先銀行の預貯金口座などはだいたいわかるでしょう。しかし遠隔地の不動産や、普段使わない預貯金口座や証券会社などがありますと、相続人は残された郵便物や古い通帳、不動産の権利証などを頼りにこれらをひとつひとつ調べ上げることになります(相応の手間と費用がかかります)。また、漏れなく調べあげられるという保証もありません。

手続きから抜け落ちる財産も出てくるかもしれません。

⑤ 子どものいない夫婦のリスク

子どものいないご夫婦の場合、遺言書が残っていませんと特に面倒になります。「夫側の親族」と「妻側の親族」とでトラブルになるケースもあります。

子どものいない夫婦の相続に関しては、別記事で詳しくお話しております。

【相談室】わたしたち夫婦には子どもがいません。相続に関して特別な注意が必要でしょうか。

〈実例〉子どものいない夫婦に起こった相続トラブル

まとめ

遺言書を残すことで様々なトラブルを回避することができます。

また、遺言書には「自分がいかにして人生を歩み、財産を築いてきたのか、そしてどのような想いでそれを相続人に分配することに決めたのか」といったメッセージを盛り込むことができます(付言事項といいます)。

付言事項には、特に法的な意味はありません。しかし相続問題において、当事者の感情面というのはとても大切な要素です。お気持ちを書き添えることによって、残された相続人が救われる、ということもあるのではないでしょうか。

この記事をお読みいただいたことが遺言書を作るきっかけとなれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。